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そんな母も病気には勝てない。
私が薬剤師として病院に勤め出した翌年、自分の手を娘が離れたと言わんばかりに天国へと旅立った。
父が他界して10年後の出来事である。
葬儀を終えると、私の日常は戻りまた恋愛に足を踏み入れる。
お酒の席で知り合った、SEを名乗る男性と付き合い始めて3ヶ月後、妊娠が発覚して結婚。
しかし、彼は産まれて間もない赤ちゃんの鳴き声が数分泣き止まないだけで「うるさい」と逆上し私に手を上げた。
殴られている間は訳が分からなかった。
頭の中は真っ白で、痛みというよりは、彼の色を持たない瞳と泣き止まない赤ちゃんの泣き声だけを鮮明に覚えている。
彼が立ち去った後、子供を抱きしめ懸命に自分を取り戻す。
ギュッと目をつむり、母の笑顔を思い出す。
…あの湯気に包まれたい。
それがきっかけ。
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