それでも湯気は暖かい。

4/7
前へ
/7ページ
次へ
自分で母の味を再現すべく、子供を背負いながらキッチンに立った。 作っている間は無心でありながら、出来上がりテーブルに置かれたポタージュスープを見ると母の笑顔が湯気の霞に浮かび涙がにじむ。 「おかえり」 母の声が蘇る。 そうだ…頑張らねば。 彼だって父親なのだ。 いくら私に暴力をふるっても、自分の血が受け継がれた我が子は可愛いんだから。この子に手をあげることはないはずだ。 泣き声が少し苦手だから、イライラしているだけ。 泣き止ませる事が出来ない私が悪いんだ。 頑張ろう…もっと。 ポタージュスープを今一度口に入れ、弱くなった気持ちを奮い立たせた。 そんな日々が続くなか、事は起こった。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加