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赤ちゃんがソファの下に置いたバウンサーで眠っている隙を見てトイレに立った。
その数秒の間に彼が仕事から帰った。
トイレから私が出て来た瞬間、断末魔の様な叫びに近い子供の泣き声が耳に届く。
リビングに駆け込んだ時には遅かった。
バウンサーごと横にひっくり返り為す術無く泣きわめく赤ちゃん。
明らかに彼が蹴り飛ばしたと言う結果だった。
嘘…でしょ…。
血の気が一気に引いた。
「うるせーな!」と彼が再び蹴り上げる。
「やめて!!」
身体の奥底から叫び、そしてバウンサーごと彼女を覆った。
「俺が座るソファの足元に居たら邪魔だろうが!」
「その位考えろよ!」と今度は私の背中に彼の足が当たる。
それでも、子供を蹴られると言う光景を目の当たりにするよりも痛みは感じなかった。
「お前、誰の嫁だと思ってんだよ!勝手にデキて、勝手に産みやがって!デキ婚なんていい迷惑なんだよ!」
「そもそも、そいつ俺の子なの?」と私の前髪を掴む彼の目はやはり色が無い様に思えた。
頬に入る平手打ちで、唇が切れて血が周囲に吹き飛ぶ。
気にする間もなく反対の頬にも平手打ちが施され、バウンサーを抱えたまま床に倒れ込んだ。
容赦なく繰り返される足蹴に、赤ちゃんを腹部にかくまいながら思った。
この人に父親なんて自覚は無い。愛情の欠片なんてこれっぽっちも無い。
この人は、この子をいつか殺す。
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