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ダ厶ッ!とダンクのように床に押し付けられて、アタチのドリブルは止まった。
「……わかったらバカな夢見てないで、ご飯食べちゃいな」
「…………」
四肢を広げて突っ伏したアタチを中心に、サアーーッとまるい水たまりが広がる。
「わっ! なんだチャーコ、泣いてんのか!?」
だってハチの言う通り。
アタチはコブタ、彼は人間。どうあがいたって恋人同士になんかなれない。
打ちひしがれるアタチの頭の上に、雑巾が投げつけられた。
「ちゃんと自分で拭きなさい。水滴が残ってたら吊るすからね」
「…………」
「お、おいハチ……」
オロオロするカイを尻目に、ハチはリビングを出ていく。
アタチは頭の上から雑巾を取り、両前足を揃えて床を拭いた。
キュッ、キュッ。
きちんと拭いてるのに濡れた床はちっとも綺麗にならない。
ポタポタ涙が止まらなくて、水たまりは広がるばかり。
(なんなの、この気持ち……。あの人とお話したい、あの人を見ていたい。あの人がいい、あの人じゃなきゃダメ、でも……)
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