32人が本棚に入れています
本棚に追加
こんなに苦しい『好き』があるなんて。
体じゅうの水分が涙に変わって、ポークジャーキーになってしまいそう。
「待ってろチャーコ、俺も手伝ってやるから。な?」
カイが立ち上がってリビングのドアを押し開くと、そこにはハチが立っていた。
「……なんだよ。手伝ってやるだけだ。ちゃんと自分でやらせるか……」
「一瞬……」
小さくこぼれたハチの声にカイが眉をひそめる。
「一瞬だけ……イケメンのコブタになってやりたいと思っちゃったよ……」
その言葉にアタチの雑巾を持つ前足が止まった。
「……はは。そんで俺を捨てるつもりだったのか?」
「ごめん……」
カイが困ったように笑って、ハチの肩を抱き寄せる。
「いいさ。俺よりお前の方がチャーコと一緒に居る時間は長いんだ。歯がゆさも100倍だろうな」
そして二人は、ハチが持っていた二つの雑巾で床を一緒に拭いてくれた。
(ハチ……カイ……)
「ほら、そっち。まだ濡れてるぞ」
「あっ! 鼻水まで垂らしてる。おばかコブタ!」
そうしてアタチたちは、ついでにリビングの床全体をピカピカに磨き上げたのだった……。
最初のコメントを投稿しよう!