ファンシー

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彼女は一週間後に戻ってきた。マスクと黒い帽子で顔を隠している。店長であるお母さんに体の具合を心配されるどころか、「どこをほっつき歩いてたのよ!まっすぐ家に帰りなさいといつも言ってるでしょ!」と罵言される始末だ。 仲介に入ろうかと席から体を浮かせてはいたがやめさせる勇気などあるはずもなく、長い時間が過ぎ去っていった。 ようやく支配的な時間から解放された時、彼女はすぐ僕の向かい側に座った。そしてマスクと帽子をゆっくり外した。五本の大小さまざまな切り傷と痣。かなりの大打撃だ。 「痛くない?」 「少し」彼女の顔から涙が離れた。 「何で怒られなきゃいけないんだろうな。あくまでも被害者は君なのに」 「ああいう親だから・・・・・・」 「もしかしてずっと家に帰ってなかった?」 「当たり前よ」 それもそうだろう。殴られたり切られたりすれば血だらけになる。そんな状態をさらして家に帰るのは男でも難しい。病院か薬局に行って応急処置をするのが普通ではないか。 「自分で塗り薬とか買った?」 「親みたいな口調で言わないでくれる?もううんざり」 「あ、すまない」 「でもあなたの言うとおりよ。自分で怪我を治そうとしたの。母さんや店で働いている皆に迷惑かけられないでしょ」 僕は不思議な気分になっていた。彼女は別に美人でもない。なのに、面と向かって話していると会話がなぜか退屈にならない。何も顔が素晴らしいから会話が長く続けられるという法則がこの世に存在していると思っていた訳ではないが、女の印象は大部分を顔が占めていると信じていた。 けど違った。僕は彼女の生き方に強く惹かれた。目の前にいた彼女はとても美しかった。
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