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出会いは全てを偽って
晴れた昼下がり。
黒衣に身を包んだ青年は、白衣に身を包んだ少女に会う。
ここはヴォルフライン家。
青年、ユーゼフ・スリンスはこの屋敷の一人娘、ティーシア・A・ヴォルフラインの元を訪ねて来た。
ティーシア嬢は、まだ十七という若さでこの街を治めている。彼女の両親は、多くの人々と同じようにヴァンパイアに殺された。だからなのか、この街の治安について真剣なのだ。きっと、彼女の中にもヴァンパイアを憎む気持ちがあるのだろう。
そこまで考えると、応接室のドアが開いた。
「大変お待たせ致しました。ティーシア・A・ヴォルフラインと申します」
入って来たのは、縁に細やかなレースのある白いワンピースを着て、同色のガウンを羽織った、実に儚げな少女だった。
教会から提供された資料によると、彼女は体が弱く、表に出ることは殆ど無いらしい。
その情報から、僕は彼女がベッドの住人となった気弱な少女で、後ろで操っている人間が居るのではないかと考えていた。若しくは、病人を装っている、等。
しかし、僕の予想はことごとく外れた。
確かに彼女は線が細く、腕や頚は少し力を込めただけで簡単に折れてしまいそうだった。色も病的に白く、頬には赤見が全く無い。
彼女は、病人だ。
誰が見てもそう言うだろう。だが、僕が考えていた彼女とは全く違った。
病的な見た目。しかし、それを忘れさせるような強烈な印象。
ルビーより強烈な鮮血の色。穢無き聖なる乙女の血液を固めたような瞳に、乾くことの無い朱に浸したような髪。
その色は、白い少女に良く似合っていた。
「話は聞いてます」
少女の歳相応な声音だが、ぞくりとする何かが潜む声に、思考が引き戻される。
「アルミス教会より派遣されました。ユーゼフ・スリンスです」
僕は席を立ち、挨拶を交わす。
ティーシア嬢は僕に座るように進め、テーブルを挟んで正面に腰を降ろした。
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