異常という日常

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ラズの顔が、ゆっくりと白い首筋に近付く。 朱い舌が白い皮膚を愛撫する。 「ラズ、はやく…」 ティアが焦れたようにラズの服を掴んで促す。 ラズはその様子に唇を歪ませる。 笑った唇から、白い犬歯が覗く。 白く光る犬歯が、白く艶やかな皮膚に突き刺さる。 「は…、ああぁぁ!!」 突き刺さったラズの牙から細い管のような物が伸びて、ティアの血液を吸い上げる。 「あ、あ…、ひぁぁ!!」 ガクガクと震えながら、ティアはラズの服を掴む。 ヴァンパイアに血を吸われること。 それは決して苦痛だけではない。 ヴァンパイアの牙から流れ出る液体は、淫剤作用があり、血を吸われた人間に快楽を与える。 そのためティアの顔に苦渋の色はなく、寧ろ恍惚さえ浮かべている。 「は、ぁ…、あぁ…」 牙が抜かれ、ラズの舌が傷口を撫でる。 「…っと」 ガクリと崩れそうになるティアを、ラズは優しく抱き留める。 そっとベッドに横たえ、その躯にシーツをかける。 ティアの躯はラズの牙から流れ出た淫剤によってほてり、いまだ快感が覚めやらぬことを知らせている。 荒い息は艶を含んでおり、その表情は多くの者を引き寄せるほど淫靡なものだった。 しかし、顔色は悪く、全身が青白く感じられる。 「人、呼んでくる」 「い、から…手……」 乞われるがままに、ラズは手を差し出す。 ティアはその手を取り、頬に擦り寄せる。 ラズの手の冷たさに、詰めていた息を吐き出す。 ラズは空いているほうの手をティアの額に当てる。 「少し寝ろ」 ラズの手が、ティアの目を隠す。 冷えて行く感覚が気持ち良くて、ティアはうつらうつらとしだした。 「…ラズ」 ティアに呼ばれ、ラズは苦笑しながら彼女の隣に寝る。 彼の冷たさを求めるように、ティアはラズに擦り寄る。 ラズの人ならぬ冷たさは、ティアに安心感を与える。 ラズはそっとその白い躯を抱きしめる。 程なくして聞こえた寝息に口元を緩める。 「後五分したら女中を呼ぶか…」 そう言ってラズは、青白い顔をして安らかに眠るティアを見つめた。 .
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