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神を語る殺人者
中央都市から汽車で一時間半。
国境付近にあるためか、貿易で栄える街に彼は来た。
「あの、すみません。聖メルリアス教会へはどう行けばよろしいでしょうか?」
穏やかで、丁寧な口調で話す彼は黒を基調とした牧師の服を着ている。柔らかそうなプラチナブロンドの髪に、夏の若葉を思わせる澄んだ翠の瞳。それはまるで、神に仕えし天と地を守る天使のような容姿であった。
「教会へなら、もうすぐ来るバスに乗っていけば良いですよ」
「ありがとうございます」
穏やかに微笑み、お辞儀をする。
神に愛されたとしか思えないその容姿に、優しく響く声はまさに音楽。
周囲にいた人々は、彼がバスに乗るまでその調べに心を酔わせていた。
「さて、聖メルリアス教会の神父はルーデン・ロスカロス氏。幼少時から教会に通い、故エドワード・パスウィル氏の後を継いで神父になった。真面目で厳粛なクリスチャンである、か…」
彼はバスに揺られながら数枚の書類に目を通す。
そこには、今から向かう聖メルリアス教会の神父について書かれていた。
「特に問題はなさそうですが…」
独り言を呟きながら、彼はルーデン・ロスカロスの経歴が書かれた書類を読む。
ロスカロスは特に変わった経歴の持ち主ではなく、多くの神父と同じように近くの教会で学び、そして神父になった人だ。特に気にとめることもなく、埋没してしまいそうな人物である。
「まぁ、僕が呼ばれたということは、神父自身に問題があるというわけではなさそうですね」
そう言って彼はため息をついた。
その顔には憂いの色が浮かんでいる。
「仕方がない。僕が選んだんだ」
自分に言い聞かせるような声は、狭いバスの中ですら聞こえないほど小さかった。
「次、聖メルリアス教会」
「あ、降ります」
運転手のアナウンスが聞こえ、彼は慌てて立ち上がった。
バスが停車し、彼は大きな鞄を持って降りた。
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