神を語る殺人者

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事の起こりは四年前。 この街にもヴァンパイアが出現するようになってから二年ほど経ってからの事だった。 それは、当時は噂でしかなかった。 ただ、同族狩りが出る、と――― その噂が流れ出してから約一年、とうとうソレは出たのだ。人間を襲おうとしていたヴァンパイアを、捕まえて、襲ったヴァンパイアが。 血液をすべて吸われたヴァンパイアは枯木のように干からび、その光景を目の当たりにした人間は恐怖で腰を抜かし、そのウァンパイアに命請いをした。普通ならば人間の血を吸うのがヴァンパイア。しかし、 「貴様らには興味ない」 と、ただ一言だけ呟いた後、その姿は闇に消えたそうだ。 そしてそれからというもの、この辺りのウァンパイアの数は減り、被害もどんどんと少なくなっていった。 「こう言ってはなんですが、被害が減るのなら同族狩りでもなんでもいい心境にあります」 苦虫を潰したような顔をして、ロスカロス神父は言った。 現状を見れば人としてそう思うのは当然である。しかし、神父という神に仕えし立場の者としてはあまり褒められる発言ではない。 それを察したスリンスは、何とも言えない表情をした。何と声をかけたらいいのかわからない、という感じの表情だ。 「あぁ、すみません。貴方を困らせるつもりでは…」 「いえ、お気持ち、お察しします。僕も最善を尽くしますので」 「ありがとうございます」 お互いを慰めるだけの言葉はその場に沈み、実際はなんの慰めにもならなかった。 「神父さまー。ロスカロス神父さまー?」 スカロス神父を呼ぶ幼い子供の声がし、彼はゆっくりと立ち上がった。 「少々失礼します。よろしければ、あちこち見て回っては如何でしょうか?」 「そうですね。そうさせていただきます」 「神父さまー」 催促するような子供の声に、ロスカロス神父は少し微笑みながら部屋を出た。そのあとを見送って、スリンスも部屋を出る。 見ると、ロスカロス神父が子供に手を引かれて教会の外に出ていくのが見えた。その際、近くのシスターに何か言付けし、そしてまた子供に引っ張られて行った。 .
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