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「そうでしょ。これ、藍銅っていうんです。このメタリックな藍色が特徴なんですよ」
松崎は石に興味を示した林田に笑顔を向けた。これに引かない男が貴重なのは松崎も同じだ。妙なところで思惑が合致している。
林田は思わぬ形で得られた笑顔に顔を真っ赤にした。今にも高血圧で倒れそうである。
「これが理系男子のハンティングか」
恋とは無縁そうな亜塔だが、二人の成り行きを興味深そうに見つめる。
「なるほど。身近な理系女子も見逃せないんだな」
芳樹も頷くが、学校の先生ならば出会いは普通にあるだろうとも思えた。しかし二人は変人の吹き溜まりである科学部の顧問を務めてしまう者同士。出会いは極端に少ないのかもしれない。
「あの、それではどうして突然穴が現れたんだと思いますか?」
ここで雰囲気をぶち壊す男子が一名。それは井戸問題を解決したい楓翔だ。
「ううん。そうね、意外と防空壕があったのかもよ。あれでも穴が出現するから」
松崎もすぐに答えてしまう駄目さである。林田よりも興味優先なのだ。この恋はなかなか難しいかもしれない。
「へえ、防空壕ね」
恋に興味はあるが林田の恋はどうでもいい千晴が話を進めようと呟く。
「そうなの。ああいうのって個人的に造っていたり、造ったまま放置してしまうでしょ。それに文献に残さないし。意外と危険なのよね」
松崎はもう地学命の顔になっていた。
「でも、それも地盤沈下の一種ですよね。水の力ですよね」
楓翔が悩んでしまう。
「あれって水があったっけ?」
興味を持った松崎まで井戸問題に参戦し始めた。もう林田は置いてけ堀で悲しそうな目をしている。
「少し入ってましたよ」
おかしいなと楓翔は首を捻る。
「そうね。まだ陽も高いし現地調査に行きますか」
なんと松崎が井戸に行こうと言い出してしまった。こうして午後4時の西日が強い中、森の探索へ出かけることになった科学部一行である。
<参考文献>
後藤忠徳著『地底の科学 地面の下はどうなっているのか』べレ出版
松原聡 他著『図説 鉱物の博物学』秀和システム
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