第1章

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無事に炭でのアーク放電も成功し、火花を盛大に散らした科学部のメンバーと林田はプラズマに満足していた。 「これで空振りだったのは井戸だけだな」  片づけをしながら亜塔はそんなことを言う。しかしこのプラズマだって空振りと同じだ。結果として化学教室で見た謎の光は謎のままである。だがもう一度あのカオスな実験資料と格闘することは避けたいメンバーは黙っておいた。 「ん?井戸?」  そこでプラズマボールを片付けていた林田がなぜか反応した。 「北館の裏の森っぽいところにあるじゃないですか。目的不明の井戸が」  何か情報でも持っているのかと、桜太は電子レンジの片づけをしながら説明した。本当は井戸ではなく貯水タンクだろうという結論になっていたが、見た目が井戸っぽいのでどうしても井戸と言ってしまう。しかし貯水タンクだろうが井戸だろうが水を汲み上げるものがないとおかしいというのに、それがなかったので使途不明だ。 「ああ、あれね。ちゃんと井戸に見える?よかった」  林田はもさもさ天然パーマを揺らしながら安堵の表情を浮かべた。これには科学部全員が首を傾げる。しかもちゃんと見えるとはどういうことか。 「あの、あれは井戸ではないということですか?」  興味が勝ってしまった楓翔が質問する。あれが井戸ではないとすれば何なのか。ここは学校の地質調査をしたい楓翔には大きな問題だった。 「そうだよ。あれが必要になったのは俺がこの学校に来て二年目だったかな。急にあの森の中に穴が出来たと大騒ぎになったんだよ」  林田は答えつつもにやりと笑う。そして楓翔に近づき始めた。楓翔とはまだ熱い抱擁を交わしていないことを思い出したのだ。林田にとって熱い抱擁は男同士の友情の証である。
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