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「いや。だからさ、穴が開いたからどうしようって話になったんだよ。でも地盤沈下かと思って観察していても変化なし。これはもう崩れないなとなってさ、生徒がうっかり穴に落ちないための処置がいるってなったんだ。そこで、俺が井戸のような恰好をさせておけばいいと提案し、製作したってわけだ」
内股のままだが林田は胸を反らして自慢する。その珍妙な格好と揺れる天然パーマに千晴が限界を迎えて吹き出した。
「その、水が入っていたのも先生のせいですか?」
やはり興味がある楓翔は、桜太の背中からちょっとだけ顔を出して訊いた。まだ警戒しているのだ。
「えっ?さすがにそんな芸の細かいことはしてないよ?雨水でも溜まったのかな?」
林田が井戸を制作していた時はただの穴だった気がする。水はなかったはずだ。
「地下水じゃないのか。地盤沈下しているし」
亜塔が楓翔に訊く。この井戸問題でともに国営放送の某番組ごっこをした仲だ。この問題解明には楓翔が必要との認識がある。
「そうですね。でも、それにしては水が少ししかないんですよ」
ようやく桜太の背中から離れた楓翔は首を傾げる。それにあれが地下水による地盤沈下の結果だとすれば穴の大きさが小さい気もした。
「地下水以外の地盤沈下ってあるのか?」
疑問に思った迅が訊く。
「そうだよ。ああいうのって地下水か水道管の破裂じゃないのか。あっ、ガス管の爆発もあるか」
優我がそれに足した問題はどう考えてもない話だ。ガス管が爆発していたらガス会社が飛んでくる。穴は井戸に加工されることなく塞がれているはずだ。
「ううん。水道管や下水管は違うと思うな。あれは穴が大きく開くし。高校の傍に水田があることを考慮すれば、やっぱり地下水だろうか」
楓翔は必死に可能性を考えるも情報が少ない。
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