イチハウソ wanna build our future

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小林沙耶は、毎日放課後に化学の教科書を持って、ここ、理科準備室へ顔を出す。 転校による勉強の遅れを教えているのだけれど、 一生懸命勉強するその横顔を見ていると、 たまらなく苦しくなって、 つい、 つい、 抱きしめてしまう。 今もそうだ。 すごく大切。 もっと近づきたい。 ずっと側にいたい。 とても…大好き…。 思いが溢れて、彼女の旋毛に唇を寄せて、 さらに強く抱きしめ、目を硬く閉じた。 『嘘…やんな…』 『…嘘じゃない。俺は本気…』 『そりゃ、あかんやろ。 卒業まで、たった一年ちょっとや。 そこは大人のお前が我慢せなあかんやろ』 彼女を抱きしめながら、ちゃんこ鍋のつくねを口に放りこみながら言った淳の言葉を思い出した。 『待ってる間に他の奴に持って行かれたら、どうするんだよ』 『それも運命やろ。 もし、学校にバレて、ドストライクの彼女が処分されたら、それこそどうするんや』 『………』 『まずは彼女のこと考えたれ』 『………わかった』 その日から、彼女を抱きしめちゃダメだって自分に言い聞かせているんだけれど、いつも止められない。 俺は彼女のことを考えられているのか? 自分のことしか考えていないのか? 俺は、大きく息を吸って決心した。 「化学の補習は……今日で最後な」 抱きしめている手を緩め、彼女に話しかけた。 もう二度と、こうやって触れられないかもしれない。 胸がキンキン痛くて苦しくなる。 「だから…小林は、明日から放課後にここへ来なくていい」 彼女は、ピクンと体を震わすと、俺の胸に当てていた顔をゆっくりと上げた。
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