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理科準備室のドアを背にして、俺はしゃがみ込んで俯いた。
ドア越しに君の泣き声が聞こえる。
今すぐドアを開けて、
君を見つめたい。
君に触れたい。
君を抱きしめたい。
だから…このドアを開けられない。
顔を上げると机の上、さっき校長から受け取った白い紙。
ワープロで書かれた文字。
『4月1日付けで、広島校への赴任を命じる』
「嘘…だろ…」
俺は前髪を、かき上げた。
こんな状況で広島なんて。
これも運命なのか?
ドアの向こうで日高の声がする。
苦しくて胸が痛い。
君が日高と離れていく。
これが運命なのか?
「雪だるま、作りてえ」
床に座り込んだまま、俺は顔を上げることができなかった。
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