イチハウソ wanna build our future

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「先生、どうして会ってくれなかったの?」 「沙耶が可愛いから」 「嘘…でしょ…」 「クッ」 「ちゃんと答えて下さい」 「本当だよ」 見上げると、穏やかな表情で私を見つめる先生と目があった。 恥ずかしくて視線を逸らし、赤くなった顔を髪で隠した。 風が少し吹いて、数枚の桜の花びらが流れ漂った。 「沙耶、しっかり勉強している?」 「大丈夫だよ。先生のおかげで、遅れていた化学も何とかついて行けるようになったよ」 「ああ、そうだったね。あとは誤字脱字だね、あれは酷い」 「………」 私はしだれ桜の枝先を見つめながら、少し頬を膨らませた。 先生は私の頬をゆっくりと抑えて、小さく笑った。 「沙耶は何になりたいの? 目標を持って勉強するといいんだよ」 私は先生を見上げた。今度は視線をそらさないように頑張った。 「私がなりたいのはね…」 「ん?」 先生が私を見つめている。 私の気持ちを、ちゃんと伝えられるかな。 「先生、私ね、早く、先生のこと名前で呼べるような大人になりたい」 先生は一瞬辛そうな顔をしたけれど、すぐに笑顔に戻った。 「じゃあさ、良太って呼んでみて。大人になる練習」 先生はニコリと笑った。 「なんだか難しいよ、先生」 意を決して、そう呼ぼうとしたけれども、胸がギュッと苦しくなって、喉がカラカラになって、いつまで経っても、そう呼ぶことができなかった。 「じゃあ、沙耶、今度会えた時までの宿題…な?」 それからサヨナラをするまで、先生はずっと私の手を握り続けてくれた。
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