イチハウソ wanna build our future

2/19
6人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ
京の街並みに雪が降り積む。 冬の日本は特に美しくて好き。 「沙耶、学校で必要なものは、これで揃った?」 河原町通りをママと歩く。 「うん、大丈夫だと思う」 手に持った幾つかのショッピングバッグを軽くたたいた。 5年ぶりの日本。 当分、戻れないと覚悟していたのに、 アメリカから、まさかの帰国。 パパの急な転勤の話を聞いた時には、 「嘘…でしょ…」 ってママと二人固まったっけ。 「学校のことで、分からないこと無い?」 「うん。ホームページで調べたから、大丈夫」 一月から編入する学校は、どんな所だろう。 「沙耶の大丈夫は怪しいからなぁ。 ママはこれからお友達と約束があるけれど、ちゃんと一人で帰れる?」 ママは首を傾げ、疑い深い目で私を見つめた。 だったら、一緒に帰ってくれれば良いのに。 「大丈夫だよ。地下鉄に乗ればいいんでしょ」 「間違えて横の阪急電車に乗らないようにね」 そんなの間違えないよ。 いくら漢字に弱い私でも〈地下鉄〉くらい読めるよ。 書けないかもしれないけれど……。 「もう、ママは心配性なんだから。 友達との待ち合わせの時間に遅れるよ」 大きな交差点でママと別れて、地下鉄の駅へ向かった。 「まだ、お昼過ぎだし」 駅に着くと、ロッカーに荷物を預けた。 「嵐山までは……」 雪の京都を少し探検したくなって、阪急電車の運賃表を見上げた。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!