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嵐山は昨夜から降った真っ白な雪に覆われていた。
「うわー、すごい!」
温暖なフロリダに住んでいた私は、積雪なんてゲレンデでしか見たことが無かった。
「嵐山と言えば、あの大きな橋だよね」
駅で見た地図を頼りに、大きな川沿いを歩き渡月橋を目指した。
途中、白銀をまとった木々が立ち並ぶ広場に新雪を見つけた。
嬉しくなって、そっと手形をつけた。
(雪だるま作りたい!)
「Want to build a snowman !」
しゃがみ込んで、夢中で周りの雪をかき集めた。
「Come on lets play…おいで、遊ぼうよ…」
よしっ、小さな雪だるまが出来た。
「あー、グチュグチューで冷たーい」
目の前に、色の変わった手袋をかざした。
「あれ?」
手袋の向こうでは吹雪が舞っていた。
いつから、こんなに雪が降っていたんだろう。
私は空を見上げた。
「えっ………」
雪だるま作りに夢中で気がつかなかったけれど、わたしの頭の上で、ビニール傘が雪を受け止めていた。
「嘘…でしょ…」
ビニール傘を持ち、私のすぐ後ろに立つ知らないお兄さん。
どう考えても、ヤバイ人…だよね?
「………俺、変な人じゃないからね…」
私の不審そうな表情を見て、顔を少し赤らめながら慌てて彼はそう言った。
それって、かえって変だと思うし…。
だけど、長い間傘をさしてくれていたのか、彼の鼻のあたまが真っ赤で、
それを見たら、なんだか可笑しくなってきて、思わずクスリと笑ってしまった。
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