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ついさっきまで強張っていた彼女が、小さく笑ってくれて、俺は安堵した。
「本当に変な人じゃないからね。
雪の降る中、君がずっとしゃがみ込んでいたから……」
本当は、『肉遅いぞ』という淳からのメールを無視して、嵐山へ向う電車から、ずっと君の後を付けていたんだから、十分変な人だよな。
(どうかしてるよな、俺)
「ありがとうございます。でも、雪、止んだみたいです」
その言葉を理解しようと空を斜に見上げると、
傘に積もった雪がするりと流れて、彼女の頭にドサリと落ちた。
「嘘…だろ…」
「……………」
彼女はしゃがみ込んだまま、顔を伏せた。
「ごめんね、大丈夫?傘差してた意味なかったよね」
彼女の頭の雪を払おうと、あわてて手を伸ばした時に、
彼女はガバッと顔を上げると、いたずらっ子っぽく笑った。
綺麗と幼いが混じり合う表情に、俺は息を呑んだ。
苦しくなってきて、横を向いて視線を逸らした途端、雪玉が飛んできて、俺の頬にぶち当たった。
「いてぇーな、お前……」
続く言葉を遮るように、2、3個の雪玉攻撃を受けた。
「したかったんです!」
「はぁ?」
「雪合戦したかったんです!」
綺麗な幼い笑顔を見せながら、彼女は僕に雪玉を浴びせ続けた。
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