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「で、今度彼女とは、いつ会うんだよ」
俺の肉を待ちきれず、湯豆腐となった鍋を突いていると、にやけた顔をした淳が尋ねてきた。
「ん?」
「ドストライクの彼女とは、今度いつ会うんだよ」
「そんな約束してないよ」
「じゃあ、約束しろ。今すぐ電話しろ」
淳は真面目な顔をして、俺のスマホを探し始めた。
「携番聞いてないし、ってか、 名前も教えてくれなかったし」
取り皿にポン酢をトポトポと注いで、煮てクタクタになった何かの葉っぱを食べた。
「えーっ、名前聞いてないのー。勿体無いやん」
「でも、嵐山の桜は鳥肌モノだって言ったら、見に行くって言ってた。その時に会えたら…」
「遠くを見るな。会えたら何なんだよ?」
「運命だろ」
「………は?」
「運命」
「嘘…だよな…」
淳はおぞましいものを見るような目をして俺を見た。
「嘘?」
「お前らしくない、気持ち悪いこと言うなよ、良太。運命って、乙女入ってるやん」
「いやいや、そのドストライクの彼女が、また会えたら運命だって、俺にそう言って、約束したんだ」
「……上手い断り文句やなぁ」
淳が残念そうに呟いた。
「また会えたら、名前を教えてくれるんだって」
俺はこの時、絶対に、また会えると、根拠のない自信を持っていた。
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