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高校2年の3学期からの編入、しかもアメリカ帰り。
だから、クラスで当面浮くかと思ってたけれど、まずは女子達と打ち解けることができた。
「沙耶、次、4時間目の化学は理科室だよー」
「おいて行くよー」
みんな、学校の流れが良く分かっていない私に、何かと声をかけてくれる。
「待ってよー」
手が切れそうな程に真新しい化学の教科書を持って駆け出した。
「沙耶は外見しっかりしてそうなのに、のんびりだねー」
朝元由実が笑いながら私の背中を叩き、そう言って横に並んだ。
「由実だって、今教室出たところでしょ」
「あっ、急げー。先生、理科室に入ったよ」
西の果てにある理科室に向かって由実が小走りとなり、私もそれに続いた。
チャイムの音と共に理科室に由実が滑り込み、その背中を見つめながら私も続き理科室のドアに向かった。
「朝元、お前にはいつも言うけれど、あと少し早く来るようにしろ」
「先生、転校生連れてきたよ」
由実が先生の注意をスルーして、私を紹介した。
由実の背中越しに先生へ視線を移した。
「嘘…でしょ…」
驚きのあまり、身体の芯がビリビリした。
もう会えないと思っていた人、
名前も連絡先も告げずに別れて後悔したあの人が、
すぐ目の前で私を見つめていた。
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