6人が本棚に入れています
本棚に追加
「知らない人に名前や連絡先教えたらいけないって、ママが言ってたからダメ」
散々雪遊びに付き合ったのに、彼女は名前すら教えてくれなかった。
「どうすれば、知っている人になれるんだよ?」
拗ねた口調で彼女に尋ねた。
「そうだね、うーん」
彼女は白銀の木々を眺めながら少し考え込んだ。
雪の白に溶け込みそうなほどに白い彼女の横顔を見つめた。
「例えばさ、私達が、また偶然に会えたら、それって知り合いだよね」
彼女はそう言って、ニコリと笑った。
俺はその表情に胸がキツく締め付けられて、心臓が止まりそうになった。
「また偶然に会えたら、その出会いに、私、運命感じちゃうよ」
「運命?」
「うん、その出会いが私たちにとって避けられないものだっていう運命。
だから、その時には、名前だって連絡先だって、伝えられると思う」
真面目な顔をして話す彼女は、苦手な問題を答える生徒みたいだった。
……本当に生徒だったんだ。
あんなに逢いたかったドストライクの彼女は、
今まで避けてきた人、
触れてはいけない人、
「嘘…だろ…」
俺は席に着く彼女を見つめて小さく呟いた。
彼女は俺の生徒。
……俺は彼女の先生。
最初のコメントを投稿しよう!