6人が本棚に入れています
本棚に追加
理科準備室でインスタントコーヒをいれた。
空気を入れ替えるために開け放った理科室の窓を抜けて、昼食を終えた生徒の遊ぶ声が遠くに聞こえた。
(……触れてはいけない人)
彼女との間に、見えないけれどとてつもなく高い堤防が、、、現れた、よな。
「せっかく会えたのに……」
コーヒーをコクリと一口飲んだ。
「嘘…だろ…」
大きく息を吐いて目を閉じ、パンクしそうな頭の中を整理しようとした時に、ドアがノックされた。
「はい」
俺はダラダラと音の方へ向かい、内鍵をカチャリと開けた。
ドアを開けるとそこには、ドストライクの彼女が立っていた。
もう、名前は知っている。
小林沙耶。
「先生、あのー」
俺を見上げる色白で小さな綺麗な顔。
長いまっすぐな黒髪。
あどけなさが残る、真の強そうな瞳。
真っ白な嵐山が蘇る。
さっき作ったばかりの堤防が、あっけなく決壊した。
最初のコメントを投稿しよう!