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だがスグルはその安恵とリュウを、それから3年半で置いて逝った。
スグルと安恵の結婚生活はトータルしても6年にも満たない。
最低のダンナだとリュウは思う。
スグルが登録していた出版社からは、『仕事先で戦渦に巻き込まれた』としか聞かされなかった。
その後も詳しい事情や理由は何も教えてもらえない。
ふたりにとって、ただ突然に突きつけられた、あまりにもあっけなさすぎるスグルとの別れだった。
「お腹、すいちゃったね」
スグルがいなくなってから、夜行性のリュウを置いて安恵が先に休むことはない。
いつも、
「夜に食べると太っちゃうのよ」
と文句を言いながらも、軽く夜食でもつまみながら、キッチンを兼ねた狭いリビングでふたり一緒に過ごす。
リュウと安恵は家族として、スグルの残したアパートで身を寄せ合って暮らしていた。
スグルのせいで出来た心の穴を、今はお互いが嘗めあうことでしか癒す方法を知らない。
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