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「そうイジめてあげなさんな。結城クンが脅えているじゃないの」
助け手を出してくれたのは、香織の友人の古葉クレナだ。
「じゃ、体育祭の実行委員長は香織で、副が結城クンってことでいいね」
「なんでよ。この場合、負けた方が委員長でしょ」
香織が噛み付く。
「ううん。朝月香織が委員長。これ学級委員からの命令ね」
クレナは笑いながら言って、黒板に香織の名前を書いた。
教室中がやれやれといった空気に包まれる。
体育祭の出場種目をクラスメートに割り振る実行委員などという面倒な役は、誰も好んでやりたいとは思わないのだ。
「じゃ、今からは実行委員のふたりに進行を譲ります。ほら香織、後よろしく」
香織は口の中でぶつぶつと何かをつぶやきながらも、椅子を立ち宣言した。
「あ~じゃあ、基本的に全員参加ってことにします」
クラス中から、
「え~っ」
というブーイングがあがる。
「文句言うなら、私が全部決めるわよ」
香織は迫力のあるひと睨みでクラスメートを黙らせた。
「希望からとります。早いもの勝ち。でも希望者が重なった場合は民主主義らしく多数決。手をあげて、はいっ」
いっそすがすがしいほどに歯切れのいい言葉に乗せられて、チラホラと手があがった。
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