1 それぞれの悩み

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その時、クレナが音を立てて立ち上がった。 「混合リレーのメンバーは、みんなに文句がなければこれでいきましょう。異存があるなら、今のうちにどうぞ」 クラスを見まわすが誰も手をあげない。 だが誰かが小声で言った。 「でもアカリちゃんが何って言うか……」 「大丈夫」 クレナが声をあげた。 「重永クンにお願いするってクラス全員で決めたんだもん。たとえリレーを棄権するようなことになっても、みんな後悔しないよね」 みなお互いの顔をながめやりながら、なんとなくうなずきあう。 「だったら決定。みんなで決めたクラス意思に、先生ごときから文句は言わせないわ」 頼もしい学級委員の顔で黒板の前まで戻ってきた。 「じゃ帰りのホームルームはこれでおしまい。練習スケジュールは他のクラスと相談してまた報告します。みんな、お疲れさまでした」 クラスメートたちはガタガタと椅子をならして、部活動や帰宅など、それぞれの理由で散っていった。 なんとなく教室に取り残されて、クレナと香織とリュウだけになる。 「では、学級委員と実行委員とで、重永くん家に行ってみますか」 クレナは弾みをつけて立ち上がった。 ふたりはその後に従った。
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