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「クレナ、アカリちゃんから何か聞いてる?」
香織が尋ねた。
クラス担任は若い独身の女教師で、生徒からも友達のように『アカリちゃん』と呼ばれている。
「うん。先生から信頼されちゃって。正直どうかと思うほどよ」
クレナの言葉には皮肉が込められている。
優等生のクレナなので、学校ではあからさまにはしないが、気を許した香織にだけは、
「あの先生、揉め事が起こらないようにってことばっかり考えて、指導力がないんだよね」
と言ってはばからない。
「普通、生徒の家庭環境に関わることまで、他の生徒には話さないでしょ。
母親の交友関係が気に入らなくて息子が登校拒否してます、なんて余計なこと知ってると、変な気ばっかり使っちゃって、ヘタすりゃ子ども間の関係だって破綻するわ。
それを自分じゃ処理出来ないからって、友情なんて言葉の綺麗ごとで、どうにかしようなんて考える教師は職務怠慢よ」
正直、リュウには難しすぎて、クレナが何を言っているのか良くわからなかった。
「身も蓋も無いわね、あんた」
香織が苦笑いしながら答える。
クレナは言い過ぎたかと、今更ながら口を押さえた。
「ま、アカリちゃんからの情報なんて当てにしないで、香織と結城クンのその目で、本当のところを確かめてみてよ」
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