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プロローグ
結城リュウは、常に微笑みを絶やさないように気をつけていた。
だからいつも目は糸目で口角は斜め上に持ち上げられている。
「結城ぃ。ほら、じゃ~ん、け~ん」
とっさに振られ、ホイ、と言われる前にグーを出してしまい、朝月香織から、
「信じらんない」
と肩をすくめられた。
「不器用にもほどがあるわよ。ジャンケンも出来ないの、あんた」
「いや、知ってはいるけど」
「何言ってんの、ジャンケンぐらいで」
ホイで出すの、ホイで、と言われても、どうにも香織のペースに馴染めなくて、
「じゃ~ん、けん、ホイ。ホイってあんた、今度は後出しっ」
と突っ込みを入れられた。
「しかも後出ししといて負けるってどういうことよ!」
香織はパー、リュウはグー。
「あんたはグーしか出せないの? 人間の手は、もうちょっと器用に動くもんでしょ。ほらグーチョキパー。少しは頭使いなさいよね」
返す言葉もなく首をすくめるしかない。
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