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なのにそんな平和な景色の中から、言い争いをする声が聞こえてくる。
「だからさぼらねぇって言ってるだろ。そんなに睨んでんじゃねーよ」
「だって秋哉兄、ちょっと目を離すとすぐいなくなっちゃうじゃない。ただでさえ今年は雪が多くって、枝が折れてんだからさ。ちゃんと片付けないと、後で春兄にどやされるよ」
「冬依が言わなきゃバレねえーんだよ」
「ヤダよ。なんだってボクがひとりで掃除――」
散々にケンカしていたのに、はっと気づいたようにふたりは同時に私の方を見る。
どうやら兄弟らしくふたりの息はぴったりだ。
ふたりはそのままジーッと私を見つめて目をそらさない。
私の顔に何かついているのかと、思わず頬に手をやるが、大丈夫、さっき涙はぬぐっておいた。
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