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”主人公”は何もなかったような素振りで僕の横を通り過ぎていった。
彼に続いて僕は「2-B」の教室を目指す。
この学校は「成律高等学校(セイリツコウトウガッコウ)」という偏差値50程度のどこにでもありそうな平均的な学校だ。生徒数は一学年12クラスという驚愕的な人数ではあるが、校内は物静かで自分の上履きの足音が聞こえるぐらいだ。
現に、自分と”主人公”の足音しか聞こえない。
話しかける内容なんてないから、お互いに黙って階段一段一段上がっていく。
徐々にお互いの差が開いていったが、気にせず階段を上りきり、三階まであっという間だった。
そして、階段の左に曲がったところに「2-B」の教室がある。
さすがに教室の前は楽しそうな声が漏れているが、僕はそこに飛び込む勇気がつかず、また教室の前で、立ち止まっていたのだった。
多分、”主人公”はすでに教室の雰囲気に溶け込み、楽しんでいるのだろう。
僕が教室の扉に手を差し伸べた瞬間だった。
突然、教室が静まり返る。
そして、おそらく”主人公”であろう人物がこう言った。
「細田、いつになったら学校から去ってくれんのかね?」
僕は気分が悪くなり、「2-B」教室近くの男子トイレに駆け込んだ。
そして、純白な洋式トイレで汚染物質をぶちまけた。
個室に僕一人、”誰からでも守ってくれる”そんな安心感にさせてくれる「TOTO」便器にしがみつくのでさえ精一杯だった。
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