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貴明はそれから何度も、顔を背けるあたしを強引に押さえ込んだ。
「やめて、タカ。嫌なの!」
あたしにキスをするためだ。
あたしの悲鳴は貴明に飲み込まれ、あたしの呼吸さえ貴明の思うまま。
あたしは貴明の許しがなければ、息をすることも出来ない。
やがて悲鳴も声も失い、すべてを諦めるあたしを拘束して貴明は、
「お前は黙って、俺の側にいろ」
命令する。
あたしにはもう、貴明に刃向かう力なんか残っていなくて。
ただ貴明から逃れるためだけにコクコクと顎を動かす。
絶対的な力の差に、あたしには、もうどうすることも出来ないのだと諦めていたけれど、
「ずっと知里ちゃんのことが気になっていたんだ」
そう言ってあたしを見上げるこの栗色の髪の先輩は、貴明に殴られても、あたしから逃げていかなかった。
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