1 幼なじみ?

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男が怯んだと見るやいなや、貴明は背を反らして拳を溜めた。 瞬間、スローモーションのように変わる景色。 大砲みたいに発射される貴明の強烈な一撃。 そしてドラマみたいに倒れていく男。 この世界の中で、 ――貴明だけが生きているみたいだった。 殴り倒した男の体を踏みつけて、ぐったりとコンクリートに横たわっているユキには目もくれず、 貴明は屋上に建っている給水塔の上まで、跳ぶように駆けあがる。 「いっちばーん!」 まるで徒競走に勝った子どもみたいに、己の存在をアピールする。 世界に喧嘩を売っているみたい……。 あたしには、貴明が素手で太陽をつかもうとしているようにも見えた。
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