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給水塔の上から、
「よぉチィ。見てたか?」
あたしを見下ろしてくる貴明の髪は金色。
太陽に反射する長めの猫っ毛が貴明の頬に振りかかり、貴明は邪魔くさそうに長い指でそれをかきあげる。
『切ればいいのに』
貴明の髪にユキの血がこびりついて、濡れて塊になっているのが気に入らない。
貴明の太陽のような髪が、錆ついたようにゴワゴワになるのは、見ていて辛い。
「見てたよ」
でもあたしは余計なことなど言わず、貴明に聞かれたことだけに答える。
小学生の頃から知っている貴明は、お節介はキライだから。
そして誰よりも『かまってちゃん』な貴明は、自分の存在が無視されることを、何より嫌うから。
今日みたいに。
あたしが貴明に嘘をついてライブに出かけたことを怒るみたいに。
貴明がキレる時は本気だ。
たとえ相手があたしであっても。
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