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本当は怖くてたまらなかった。
拳を血に染めながら容赦なくユキを傷つけ、
でもそんなこと一向に気にする風もなく、くったくなく笑う貴明の笑顔が。
「こんでチィにちょっかい出すやつも減るだろ」
貴明はニカッと笑うが、
「そんなんじゃないよ」
あたしはうなだれながら答える。
驚いたことに、あの『ユキ』が人づてにあたしにメッセージを寄越した。
「また良かったらライブに来ませんか? チケットあります」
ユキのライブチケットはいつもソールドアウトだと聞いていたけれど、
今回、残っちゃったのだろうか?
それとも新規の客を放したくないだけ?
あたしのクラスまでユキにバレていることには驚いたけれど、昨夜のライブには同じ学校の子が何人か来ていた。
ユキがその気になれば、あたしがどこの誰かなんて、すぐにわかっただろう。
でもあたしは、
「行けないから」
と伝言をくれた子にそう断った。
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