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しかし、
――ガン!――
「あぁああああ!」
貴明は給水塔の壁を蹴りながら叫んだ。
鉄の壁をも破壊しそうな大きな音と、あたしのすべてを否定する貴明の叫びは、あたしの体をすくませる。
「うるせぇんだよ、てめぇ」
さっきまでの貴明の笑顔は消えて、目が鋭くなっている。
貴明の感情は猫の目のように、ころころ変わる。
だから誰も貴明には気を許さない。
「もともとチィが悪りぃんだよ。ふらふらしてっから」
ゆっくりとあたしのところに歩いてきた。
胸ぐらを掴み上げる。
「お前は俺の側にいりゃいい」
あたしの体は引きずられて、貴明にぶつかる。
その勢いのままキスされた。
奪うだけの、喰らいつくようなキス。
貴明はまるであたしを壊すかのようなキスをする。
いきなりで乱暴なだけのキス。
「逃げるんじゃねぇ」
あたしが拒むことはけして許さない。
「お前は俺のもんだ」
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