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男の子たちに周りを囲われて、真ん中にただひとりの女の子のあたし。
『かわいそう』
と言った子は遠巻きに見ているだけだ。
あたしは背中を突き飛ばされて地面に膝と手のひらをつく。
昨日まで一緒に遊んでいた子たちから、暴力を振るわれる怖さ。
自分の周りがいきなり敵ばかりになってしまった、独りぼっち感。
そして、男の子になり始めていた腕力と、女の子でしかないあたし。
たくさんの人数に囲まれている、救いのない状況。
そんな中に飛び込んできたのが貴明だった。
貴明はまだあたしより背も小さくて、腕も足も細くて、結局、
「この男オンナ。女の味方ばっかしやがってオカマかよー」
いかにも小学生らしい悪口を言われるまで、ふたりしてコテンパンにやられた。
でもあたしは、貴明が助けに来てくれたことがうれしくて、ずっと泣いていた。
すりキズも痛かったし、怖かったし悔しかったけれど、それでも貴明が味方だったことがうれしくて泣いた。
「タカだけがあたしの味方だ」
最初にそう言ったのはあたし。
「ずっと一緒にいてタカ」
そう望んだのはあたし。
だけどそんなタカを裏切って、あの遠巻きにあたしを見ていただけの女の子と同じように、
『貴明とは関係のない人間』
という顔をしようとするのも、あたしだった。
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