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あたしは周囲をキョロキョロと見回す。
貴明が姿を消してから、出来るだけ急いで追ってきたはずだ。
そんなに引き離されたつもりはない。
「タカッ!」
あたしの声を、貴明が聞かないわけがない。
空に向けて放ったあたしの呼び声に応えるように、貴明が返した。
「あぁあああああ!」
――ハウリング――
泣き。
叫び。
どう表現していいのかわからないが、確かに貴明の声だ。
その声は、ユキが起こしたハウリングのように、あたしの胸を苦しく絞める。
タカの声は、あたしにとっては『ハウリング』。
あたしは夜気を縫って、声のした方向に走る。
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