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貴明はあの公園にいた。
貴明とふたりでボコボコにされた公園。
あたしが、
「タカだけが味方だ」
と本気で思った公園。
「一緒にいて」
と本気で願った公園。
そのジャングルジムのてっぺんで、貴明は、
「あぁああああ!」
叫んでいた。
空に向かって、今は見えない太陽を呼ぶように。
誰かを呼ぶように。
「あぁああああ!」
「タカ!」
あたしはジャングルジムの下に駆けつける。
「もう止めよ。近所迷惑だよ」
ここは荒野の真ん中じゃない。
こんなライオンの咆哮のような声をあげ続けたら、近所に通報される。
実際、もう通報されているかもしれない。
世間は野生動物には冷たい。
「警察くるよ。行こう」
「――放っとけ」
貴明はぷいとそっぽを向いた。
「オレにキスされたくなきゃ放っておけ」
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