8人が本棚に入れています
本棚に追加
膝をバネにして跳ねるように突きあげた拳が、アッパーカットとなって男の顎をとらえ、男は円を描くように吹っ飛んでいく。
「ウォオオオオ!」
貴明はそれを見届け、爆発するような声をあげた。
意味なんかない。
ただ獣が本能のままに叫ぶ声。
でも貴明を囲んでいたユキたちは、その吠え声に驚き、身をすくませる。
自分の喉を獣に食い千切られる錯覚でも見たのだろう。
一瞬だけ固くなった体を、貴明は見逃さない。
貴明は相手の視界から外れるように身をかがませ、地面に手をついて足を独楽のように回す。
下半身狙い。
男たちは足を払われすっ転んだ。
派手なパフォーマンスの割には、せこい小技だけど、
ユキだけに狙い定めて貴明は飛びかかり、間髪いれずに顔面に一発叩き込む。
その様子は、計算された捕食者のそれだ。
長めの金髪をたてがみのようになびかせ、牙の代わりの両の拳を血で染める、
――若いライオン――
最初のコメントを投稿しよう!