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モテメンの日置(ひおき)が、今、オレの前で這いつくばっている。
なんていい眺めなんだ。
野外にもかかわらず、膝をつき、顔まで地面につきそうなくらい…ああ、とうとう寝転んでしまった。
滑稽だ。
オレが、右を向き、左を向きするだけで、コイツも右往左往。
この無敵感…たまらない。
「もう、このくらいでいいかな?」
「あ…もうちょ…あ、いや、ありがとうございました。」
日置がオレに敬語…ふふふふ…気持ちイイっ!
今、ここではコスプレの撮影会をしている。
山中(さんちゅう)にある、結構大きな寺だ。
大木に囲まれ苔むした石階段や、大きな灯篭の前、お堂などでコスプレした人たちが、キメキメのポーズをとっている。
これは風情ある写真が撮れる観光地を何ヶ所か巡って、地元の美味い飯も食ってって感じの、観光PRイベントのバスツアーだ。
参加者はコスプレイヤーとカメコって言うのかな、つまりはカメラ小僧、撮影が趣味の人だ。
オレは別にコスプレ趣味はないんだけど、この企画にいとこが携わってて、知り合いが急に参加できなくなったから来てくれないかと誘われた。
コスプレとかちょっと恥ずかしいけど、どうせオレの地元からはちょっと離れた市だし、衣装も用意してくれるし、料金を出してもらえて美味い飯が食えるってことで、あんま何も考えずに参加を決めた。
けど、そこでまさか日置に会うなんて思いもしなかった。
日置は大学の同期で、ちょっと派手なモテメン。
普通なら絡むこともない人種だけど、居酒屋のバイトで一緒になった。
オレより後に入ったはずなのに、一年でバイトのサブリーダーとかになってしまうくらい…まあ、デキるヤツだ。
居酒屋バイトでも女子が日置の取り合いみたいなことして、しかも二人ともを日置が説得してやめさせるくらい、問題も解決も日置中心。
結局二人ともと付き合ってるとか、本当かウソかわからない噂も聞いた。
当然、このコスプレイベントでも、目立ちまくっている。
他の男性参加者とくらべれば、群を抜いてイケメンだからな。
それにしても、まさか日置がカメラ小僧やってるだなんて思わなかった。
しかも、コスプレ好きだったなんて。
デジタル一眼を片手に、二年一緒にバイトしてても一度も見たこともないような笑顔を浮かべてる。
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