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社会科教材室は窓が棚でふさがれていて、暗くて埃っぽくて好きになれない。
ただでさえ一刻も早く退散したいのに、そこで、
「もう少し、ふたりでいたいな」
なんて言われても、
「はあ?」
としか答えようがない。
「おれ、今日で実習終わりなんだよね」
それはそれは、ごくろうさまです。
そんなことまったく記憶にないぐらい意識していない男性から、対人距離2センチに迫られたら、
「近い近い近い近い!」
以外のどんな言葉が出る?
「最初に会ったときから、かわいいなあって思ってたんだ」
どの口がそんなことを言う!
そんなことより何気に囲って逃げ道を塞ぐ、その腕をちょっとどかせ!
香織がじたばた暴れようとすると、臼井は器用に肩を押してそれを封じた。
「おっと、大声出しても無駄だよ。こっちの棟は人気がないからね」
臼井の言うことは本当で、思わず唇を噛みしめる。
自分のうかつさが悔しい。
「ああ、そんなに強く噛んじゃダメだよ。血が出てる」
細い指で唇に触れられた瞬間、全身が総毛だつほどの怖気を感じた。
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