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「ちくしょう! あのジジイ」 芹はついにワゴン車を見失ったことを認め、車を止めてハンドルを叩いた。 小さな車はゴウンと揺れる。 芹は叩いたハンドルに突っ伏して動かなくなった。 シンは果たして何と声をかけてよいかわからず、その上ポケットにガム一枚持っていないことに気づいて舌打ちをする。 「…腹は、減ってないのか?」 結局出てきた間抜けな問いに自分でも呆れるしかない。 泣いている女はとにかく苦手だ。 幸い芹は聞いていなかったのか応えないので、そっとシートベルトをはずして車から降りた。 ポケットの小銭を探り、自動販売機を見つけて温かいココアを買う。 時間を置いて車に戻れば、芹は窓を開けて顔をあげ、冷たい風に頬をさらしていた。 塗れた頬が乾いた血のりのように強張って、まるで罰を受けた咎人のように見えた。 「子どもをさらったヤツに心当たりがあるのか?」 だが芹は、シンの質問に答えなかった。 「あんたまで巻き込む気はないよ」 さすがにムッとして、シンは車を回りこみ、乱暴な仕草で助手席のシートに深く腰をかけた。 先ほどの口ぶりでは間違いなさそうだが、話すつもりはないということか。 だったら関係者として名乗りをあげるまでだ。 「一方的に巻き込まれただけじゃないぜ。おれだって当事者だ」 懐から傷ついた特殊警棒を出し、乾いた音をさせて収縮を解除する。 「それに、おれに仕事を見つけろっていったのは、そっちじゃないか」
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