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「すげぇ」 汚い椅子に座ったオヤジを囲んで、3人の若い男たちがキラキラした眼差しで小学生のような声をあげた。 オヤジは調子に乗って続けた。 「ほれ、あの二ケ月前に裏道の潰れたホテルで起こった事件なんか、ヤツの仕事としたら有名ね。 目撃証言などできっこない赤ん坊までが無残に殺されたって話よ。 その子はまさに不運だったとしか言いようがないね」 「それホントだったんすか、すげぇ話だと思ったんすよ」 ノートパソコンを小脇に抱え眼鏡をかけた男が、感心したと目をむいた。 「その事件をきっかけにして、キッズポルノで稼いでた若いグループがひとつ潰れたっていうのは有名っす。 現場ではどっかの組関係のヤツと素人女がひとり殺されて。それと生後数ヶ月の赤ん坊までが衰弱死させられたっていうむごい事件っすよね。 現場の有様から誰かへの警告なんじゃないかって噂されて。 そのグループに資金提供してたやつも、そこを足がかりに手っ取り早く縄張りを広げようと企んでたやつらまで、とりあえずは様子見ってことで、この街から手をひいたって、おやっさんから聞かされたっすよ。 そこまで考えてのプロの仕事っすかね?」 オヤジは意味ありげな笑みを浮かべた。 「親切に教えてやるほど、ワタシは命知らずのトンマじゃないね」 「……すげぇ」 まだ学生のような幼い顔をした男は、部屋に放置されたままゆっくりと死んでいく赤ん坊と、その隣でほくそ笑む残忍な殺し屋をつい想像して、思わず体をふるわせた。 オヤジは鼻を鳴らして続けた。 「本物の殺し屋は本当にヤバいよ。ヤツに見つめられると、まるで暗い暗~い海の底に引きずりこまれる気分になるね。 会いたいなんて命知らずが考えることよ。会ったら、ケツまくって逃げるが勝ちね」 「その人って、一目見たらすぐわかるほど、すげぇ殺気放ってるとか?」 一番体格のいい最後の男が、まるで憧れのアイドルを語るように言った。 眼鏡が呆れたと肩をすくめる。 「ま、なんにしろ、すげぇお人だよなあ」 3人がそれぞれの思いでため息をもらした。
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