つまり、堂々と並んで歩ける関係になろってこと

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つまり、堂々と並んで歩ける関係になろってこと

七夕の言い伝えの一つ。 “現世の海は天の川に繋がっている” それで昔は願い事が天に届くように笹を海に流す風習があったようだが、今は環境問題の点から控えられている──というのに。 「なあ、本当にやるのか?」 問えば、先を歩く少女は不服そうに振り向き応えた。 「今更? だってやらなきゃ、明日には私達のお願いは地球に優しく分別されて燃えるゴミ。そんなの嫌、私のお願いは世界を犠牲に出来るくらい大事なのに!」 「いや、俺の社会的地位は犠牲にしないでくれ」 「──もう、またそれ! 笹を盗んで海に流すくらい何よ」 少女はぷいっと前を向くと、短冊を貰いに駆けて行ってしまう。 見慣れない簪、浴衣、下駄。 見慣れたシュシュ、制服、ローファー。 彼氏と彼女。 教師と生徒。 彼女の願い事はつまり、……ってことで。 仕方なく俺は、盗んだ五色の欲望に彼女が潰される前に近くの笹の枝を一本折った。
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