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粗末な食事を終えると、今度は、素手で行う格闘技の訓練が始まった。 そこには型などなく、ただひたすらに相手を打ち倒す、実践形式の組み手のみだ。 その戦闘に年齢差や身体の大きさ、または実力差など考慮されたことはなく、打ち倒されたくなければ、強くなるしかない。 人体の急所を、自分の身体を使って覚えこむ。 続く座学でさえも、銃器の分解と組み立てで、決められた時間内に組み立て終えなければ、机脇に立った教官に無造作に頭を撃ち抜かれる過酷なものだった。 そして、そんな訓練に耐え、生き抜いた者だけが、国家機密の暗殺組織『麒麟』に配属されると教えられる。 それは栄誉なことで、誰もがうらやむ名誉ある地位なのだと聞かされ続けた。 だが、そこまで地獄を生き抜くか、それとも途中で死ぬかしか、子どもたちに選択肢はないのだ。 当時のシンには、死こそ『挫折』であり、現実から逃れられる唯一の『憧れ』に違いなかった。
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