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ひときわ身体の小さいその少年は、藪の中の暗がりに潜んでいた。 少年はこの訓練の鍵として、まず水と食料の確保を念頭に置いていた。 手元には、たった一本のサバイバルナイフしかない。 水源の確保のためにも、水辺に潜むのが本来は好ましいのだが、それは誰しもが考えることだろう。 少年は夜のうちに藪の茂みにくぼみを掘り、自分が潜む場所から遠く離れた所から採集したバショウの葉を敷いておいた。 朝晩の寒暖差で、少しでも水が溜まれば、この場所から動けなくなっても、何日かは啜って生きのびられる。 ただ自分の周りの風景は変えないように気をつけた。 たとえ葉っぱ一枚でも千切れば、敏感な者なら人の気配を察知できる。 食料は、かたつむりを獲って、大きな葉で包み、穴の中でまとめて蒸し焼きにして携帯した。 自分の位置を明らかにしないため、煙をあげないように注意し、作業を終えた場所からは、すばやく撤退する。 出来るだけの作業をすませると、後は時間との勝負になった。
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