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何日、何週間、たったのだろう。 時間の感覚はすでに無い。 だが訓練終了ののろしがあがらないので、まだ規定の人数まで減らないのだとわかる。 少年は、何度目かの飲料水の確保のために、水辺に出た。 彼が予想したとおり、そこで血の痕と、獣に食い散らかされた子どもの死体を見た。 おそらく、ここで戦闘が繰り広げられたのだろう。 あれはナイフ傷だから、戦った相手は、きっと獣ではない。 しかし、少年はその事実を『そうだ』と認めただけだった。 心の中には、何の感慨も湧いてこない。 誰の死体を目撃しようと、どんな無残な姿を見てしまったとしても、同情すれば、それはあっという間に我が身の姿になる。 死体を、なるべく己の視界にいれないようにしながら、他に人影がないかだけを慎重に窺った。 チラリと、 『自分以外の誰かが、早く数を減らしてくれればいい』 と願ってしまっただけだ。
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