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タマの報告を聞き、シンは黙って宙を見据えた。
そしてピクリと何かに反応する。
「伏せろ!」
シンはするどく3人に命じ、自らはカウンターを片手だけで飛び越えて、厨房に姿を消した。
とっさに対応出来たポチとポン太は、テーブルの下に滑り込んだが、
「タマっ!」
壁際に立っていたタマは、突然に背中を襲った衝撃で、身体を吹っ飛ばされた。
何が起こったのかわからない。
それを理解する前に、店内にいる人間の数が増えている。
トカゲの肌のような弾性ゴム地で出来た、目以外をすっぽりと覆う衣服を身につけたそいつらは、総勢5人でそこに立っていた。
割れたガラスと、舞う白煙の中から湧くように、いきなり出現していた。
前に3人。
それに背中を預けるようにして背後を警戒する2人がいる。
ヒュッ
とかすかな音がして、カウンター越しに、目にも止まらぬスピードで何かが飛んだ。
正面に立つ男の腕には、プロテクターでも仕込まれているのだろう。
無造作に腕をあげて、顔面を違わず狙ってきたそれを打ち落とす。
カチャン
と金属音をたてて床に転がったのは、厨房にあったはずの包丁だ。
男は攻撃を回避したことを誇るように目を細める。
そして笑顔のまま、ゆっくりと身体を倒していった。
――倒れた男の喉元に突き立っていたのは、包丁をおとりに、同時に投げられていた銀色のフォーク。
そして厨房から外に出られる裏口のドアが、
バタン
と音を立てて閉まった。
「チッ」
残った4人の男たちは、さほど動揺することもなく舌打ちして、一斉に厨房へと走り出す。
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