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残った敵にはシンが飛びかかっていた。
視界の効かない粉の中を、その気配だけで暗器を突き出す敵の手に与えられた感触は、何故か硬質なものだ。
バッと風が巻くように粉が散らされると、点穴針の攻撃を防いだ正体が、黄金色の鍋の蓋だと知れる。
思わず呆気にとられたところを、今度は頭から、鍋の本体が被せられた。
『ふざけるなっ!』
と心から怒鳴りたかっただろうが、間をおかずその頭上を襲ったのは、シンの警棒の一撃だった。
ギャン
とでも聞こえる、耳を貫く鍋の破裂音と、その強烈な警棒の攻撃で、敵は頭頂部をへこませて沈んだ。
「行くぞ」
シンは小声で指示すると、床に倒れていたタマを肩に担ぎあげ、店から脱出した。
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