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「オヤジさんがいれあげていた女の名前は、杏蕾(リーレイ)って言うんだな?」 確認したシンに、ポチは苦々しい顔をしてうなずく。 「店では偽名で通してましたけど、役所の住民台帳にハックして調べました。日本に住んでるから通称名があるのかなって、あまり深くは考えなかったんですけれど……」 今さらながら、後手に回ったことを悔やむ顔をする。 「その女からの依頼はないのか……」 めずらしく口数多く問いかけるシンに、3人はコクコクとうなずいた。 「ええ、シンさんへの依頼は、ここ半年では数えるほどしかないです。シンさんが姿をくらましちまったすぐの、一年くらい前なら、地元の組関係からいろいろ持ち込まれたんですけど……。 オヤジさんが『この業界も人出不足ね』なんて、人をくったような返事で断り続けてるうちに、最近はめっきり少なくなりましたよ」 「シンさんが『死んだ』なんて噂まで流れてんですよ」 タマが泣きそうな顔で言う。 するとシンは、 「生きてたよ。生憎な」 ふと漏らした。 それは何故か、己を嘲るような響きがあり、ポチとタマは目を見張る。 シンが姿を消した一年前に、何があったのだろう。 オヤジに聞いてみたら、 「ちょっとした意見の相違ね」 そんな風に答えた。
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